やわらか食を食べておられるある利用者さん。
今夜の献立は酵素を使ってとっても柔らかくした鮭の酒蒸しでした。
ナイフやお箸を使わなくても、プラスチックのスプーンでもすっと切り離せます。
口の中では歯がなくても、やわらかくほぐれます。
でも、利用者さんの手はとっても御不自由です。
お皿の真ん中にある魚をスプーンで切り分けても、手前に引き寄せて皿の淵を使ってスプーンに乗せることができません。
何度もスプーンに乗せようとして乗せられず、もう一度真ん中にある魚を一切れ切り分けて手前に引き寄せます。
すぐ後ろにいる私は何もできずにただ見守るだけ、「がんばれ。」と声をかけることもできず、気が付けば手には汗を握っていました。
皿の淵に、魚の切れ端が山になる頃にやっと一切れスプーンに乗りました。
食事が口に運ばれると、口の中ではやわらかくほどけて、誤嚥することなく食されていました。
お皿から口までの距離はとても長いのです。
食材の形状、食器の形、スプーンとすべてを利用者さんに合わせて考えていかないと食事を提供できないことがよくわかりました。
調理師 小畠